meine kleine schone Sangerin

「オースットリアさんっ」


明るい少女の声音が室内に響いた。
歌うような彼女の話し方は本当に魅力的だと思う。
いや、歌も相当な腕前だが。
彼女とは音楽の趣味もあう。
というのもここに来たばかりのときに、自分が彼女に音楽を教えたのだが。
そのせいなのか、彼女はフランス歌曲を全くといっていいほど聞かない。

(当時は私もまだ若かったんですね)

音楽は平等に与えられるべき芸術だ。
政治的なものに介入されてはならないのだが。
私はよっぽどフランスが嫌いだったのだろう。
まあ、今も相変わらず好ましくはない。


「どうしたのですか?」
尋ねると彼女は嬉しそうに顔を綻ばせた。
「あのですね、ドイツ歌曲の新しい楽譜を手に入れたんです。それで、オーストリアさん……あの、」
最後まで聞かずとも彼女の言いたいことはわかったから、
「ええ、構いませんよ。合わせましょうか」
と告げた。
「本当ですかっ!!」
彼女は破顔して喜んでくれた。
ああ、その笑顔は素敵ですね。
まるで日だまりにいるようにぽかぽかと温かい気持ちになります。




あなたといつまでもこうして2人で音楽を奏でられる関係でいたい。
ずっと変わらずに、いつまでも。




ハンガリーさん歌うまいといいです。言葉遣いは悪いけどね
2007/05/09 composed by Hal Harumiya