君がそう望むなら

「あ、オーストリアさん」
は?どこにいんだよ。俺には見えねーぞ!
「あんたなんかに見えなくてもいいのよ!あたしにだけ見えてればいいの!」
ぐっ。くそっ、こっちの気持ちもしらねーで!
「お、俺だってオーストリアなんか見たくもねーよ」

売り言葉に買い言葉。
ああ、結局こーなるのか。
「ふふん、あんたに嫌われたってオーストリアさんは痛くもかゆくもないわよ」

あんたなんか眼中にないんだから。

偉そうに彼女は言った。
正直俺はオーストリアにどう思われようがどうでもいい。
お互い嫌っているのはとっくの昔に了解済みだ。
だがこいつがそんなにあいつの肩を持つのがすごく気に食わない。

「なあお前、なんでそんなにあいつのこと…その、気に入ってるんだ?」

好きなんだ?とは聞けなかった。
なんだかすごく自分が傷つきそうな気がしたから。

(俺も相当アホだな)

自分だって結局あいつの領土になって。
なぜそれであんなに好きだと言える?

「だってオーストリアさん優しいもの」

は?

「なにお前、そ、それだけ……?」
「な、なによそれだけって!言っときますけど、あの頃の私に優しくしてくれたのなんかオーストリアさんだけだったんだから!」

それだけ?初めて優しくされたから?

その言葉を聞いた途端、どろどろと黒いものが心の中を占めた。
俺だって……お前が笑ってくれるならなんでもするさ。
今は怒らせてばかりだけど、優しくしてお前がこっちを向いてくれるなら。
いくらだって。

優しくされたのが理由なら、あいつより先に俺が出会っていたなら。
お前は俺の隣にいてくれたのか?
遠くにいても見つけてくれたのか?

もし先に出会っていたなら。

そう思ったら悔しくて悔しくて。
ここにいないあの眼鏡野郎を憎んだ。
醜い嫉妬をした。

ああ、なんて不毛な。

そんなもしもの話を考えたところで、結局あいつは眼鏡野郎のことが好きだし。
初めての出会いも変わることなんかないし。
俺のことなんかただの敵国としか思っていないのだ。

「ちょっとプロイセン!いきなり固まってどうしたのよ!」
なんでこいつじゃなきゃダメなんだ?
どうしてこんなにおかしくなるくらい好きなんだろう?
もしあいつより先に出会っていたなら。




俺はこいつがそう望むなら全世界だって支配してやるのに。




まずオーストリアを見つけた瞬間、プロイセンを捨てて駆け寄っていかないハンガリーな時点でエ セ
2007/05/12 composed by Hal Harumiya