「よぉ兄弟!!元気だったか?」
「は……?てめーいきなり何言いやがる!見ろ!!鳥肌立っちまったじゃねーか!!」
「おいおいひでーな。もともとは一つの国だっただろ?」
「それは俺の国では黒歴史だ。そんな時代はない」
「何とでも言うがいいさ。そういえばお前最近アジアのほうに手、出してるんだって?」
「……ああ、アジアは使えるからな。これからも利用させていただくさ」
「おうおう、怖ええ。なんでも、日本とかいう小国にご執心だそうで?」
「なっっ!!っべ、別にそんなんじゃねーよ!文明化してないあいつに、ヨーロッパの進んだ文明を教えてやってるだけだ!」
「へぇ……、それはそれは。それじゃ、俺が文明を教えてやってもいいよな?」
「はぁ?何でお前が……!」
「ただ、文明教えてやってるだけなんだろ?別にお前じゃなくてもいいよなあ?それとも自分以外が日本に何かするのは嫌だ、とか?」
「っ!……ああ、そうだよ」
「は?」
「俺が日本に教えてやってんだ!勝手に日本に近づくんじゃねーぞワイン野郎!」
「……」
「(はっ)と、とにかくそういうことだから、てめぇ日本になんかしたら領土ぶんどってやるからな!!」
そう捨て台詞を吐いてイギリスはそそくさと帰っていってしまった。
(へぇ……あのヘタレのイギリスがこうもムキになるとはねぇ……日本か…俄然興味が出てきたな)
初めは話の種にでもと思ったからだった。
イギリスがあんなにムキになるくらいの国。
そんな国がこの世界に存在していたとは。
今まで気づかなかったとは不覚だった。
とりあえず日本に興味が出てきた俺は会ってみることにした。
会って、この目でどんなやつか確かめて、あわよくば俺のものにでもしちゃって、イギリスの悔しがる顔でも見れれば。
(万々歳だな)
そう思っていた。
だから国際会議の席で日本に会うのを楽しみにしていた。
「はじめまして……ええと、フランスさん…ですよね?」
そう声をかけられたとき、口元がにやけるのを抑えるのに苦労した。
こいつがイギリスがご執心の。
「日本です。本日はよろしくお願いします」
俺よりも頭一つぶんほども低い身長。
丁寧な言葉遣い。
(ずいぶん……可愛らしいというか、なんというか)
正直意外だった。
(どんな目の覚めるような美人が出てくるかと思いきや)
どちらかと言えば可愛らしい容姿。
イギリスには悪いが、お世辞にも独占したくなるようなタイプではない。
「フランスだ。よろしくな」
そう言って手を差し出すと、おずおずと手を握り返してきた。
(ふうん……確かに今までにはなかったタイプのやつではあるな)
そう思った。
控えめな態度、落ち着いた物腰、丁寧な挨拶。
それのどれもが独特で、確かに興味深いやつではあった。
しかし、ひとつ気になったことといえば。
「なあ、日本人は人前では笑っちゃいけないのか?」
そう問いかけたくなるくらい、彼はにこりともしない。
いたって冷静な顔だ。
「いいえ、そんなこともありませんが、特に笑う必要もないので」
さっくり。
そんな音がしそうなほど、軽くあしらわれて少し傷ついている自分がいた。
(笑顔を見せる価値もないやつ、ってことか?)
こんな風に無下にされたことなど、外交の場では正直初めてだった。
「おいおい、少なくとも今日みたいな外交の場ではお世辞でも少しぐらいは笑顔を見せておくもんだぜ?」
傷ついた気持ちを隠しながらそう諭すと、日本は軽く驚いているようだった。
「そ、そういうものなんですか……?実は私、こういう場に慣れていないものですから」
その瞬間、さっきまでの氷の表情が少し崩れたのがわかった。
(もしかして、単に場慣れしていないだけか?)
そういえば、今思うと少々緊張した面持ちだったような気がしないでもない。
なんだ、ただ緊張していただけだったのか。
そう分かったとたん、俺の中で日本への好感度が急上昇した。
こいつとはじっくり付き合ってみたい。
きっと、今以上におもしろい面が見られるに違いない。
そう思ったから。
「くっ…くっく……いや、悪い。いや、お前おもしろいよ。どうだ?このフランスにお前の全てを預けてみないか?」
冗談めかしてそう言ってみた。
まあ、本気半分、どんな反応を返してくるかへの興味半分といったところだったが。
「それは……どういう意味ですか?」
冷静にそう返してくる日本。
(いいねぇ、口説き落としがいがありそうだよ)
「お前が欲しい、そう言えばいいのか?」
そう告げると、日本は一瞬目を見開いた。
さて、どんな反応をする?
「素敵なお申し出ですが、私はもう自分の足で立っておりますので、援助の必要はありませんよ」
にっこりと初めて笑顔を見せて。
さっくりと俺の申し出を蹴って、それでは、と別の場所に行ってしまった。
残された俺はというと。
「……くっ」
笑みが止まらなかった。
場慣れしていないといった日本から出てきたとは思えない見事な断りの言葉。
初めて見せてくれた笑顔。
流れる水のようによどみなく去っていく様。
そのどれもが興味深くて。
(気に入ったよ日本。本当に口説きがいがありそうだ)
俺はタバコに火をつけながら去っていく後姿をずっと見ていた。
後日――
「よう、イギリス!」
「げ、フランス!何しに来たてめー」
「おいおい、そんなけんか腰になるなよ。報告に来たってだけでさ」
「?報告?何だよ」
「俺も参戦しようかと思ってさ、日本の文明化に」
「!?はぁ!?なななんっ?」
「いやー、やっぱりばらばらだと思っても根っこの方は繋がってるもんだ。好みも似てくるもんだな」
「!!ま、まさか……」
「そーゆーこったから、ま、よろしく」
「ふ、ふざけんな!!!勝手に日本に近づくなってあれほど……」
「はぁーお前も青いねぇ……そんな口約束なんかでどうにかなると思ってたわけ?青いぜイギリス」
「てめぇ!!マジぶっ倒す!」
「は……?てめーいきなり何言いやがる!見ろ!!鳥肌立っちまったじゃねーか!!」
「おいおいひでーな。もともとは一つの国だっただろ?」
「それは俺の国では黒歴史だ。そんな時代はない」
「何とでも言うがいいさ。そういえばお前最近アジアのほうに手、出してるんだって?」
「……ああ、アジアは使えるからな。これからも利用させていただくさ」
「おうおう、怖ええ。なんでも、日本とかいう小国にご執心だそうで?」
「なっっ!!っべ、別にそんなんじゃねーよ!文明化してないあいつに、ヨーロッパの進んだ文明を教えてやってるだけだ!」
「へぇ……、それはそれは。それじゃ、俺が文明を教えてやってもいいよな?」
「はぁ?何でお前が……!」
「ただ、文明教えてやってるだけなんだろ?別にお前じゃなくてもいいよなあ?それとも自分以外が日本に何かするのは嫌だ、とか?」
「っ!……ああ、そうだよ」
「は?」
「俺が日本に教えてやってんだ!勝手に日本に近づくんじゃねーぞワイン野郎!」
「……」
「(はっ)と、とにかくそういうことだから、てめぇ日本になんかしたら領土ぶんどってやるからな!!」
そう捨て台詞を吐いてイギリスはそそくさと帰っていってしまった。
(へぇ……あのヘタレのイギリスがこうもムキになるとはねぇ……日本か…俄然興味が出てきたな)
初めは話の種にでもと思ったからだった。
イギリスがあんなにムキになるくらいの国。
そんな国がこの世界に存在していたとは。
今まで気づかなかったとは不覚だった。
とりあえず日本に興味が出てきた俺は会ってみることにした。
会って、この目でどんなやつか確かめて、あわよくば俺のものにでもしちゃって、イギリスの悔しがる顔でも見れれば。
(万々歳だな)
そう思っていた。
だから国際会議の席で日本に会うのを楽しみにしていた。
「はじめまして……ええと、フランスさん…ですよね?」
そう声をかけられたとき、口元がにやけるのを抑えるのに苦労した。
こいつがイギリスがご執心の。
「日本です。本日はよろしくお願いします」
俺よりも頭一つぶんほども低い身長。
丁寧な言葉遣い。
(ずいぶん……可愛らしいというか、なんというか)
正直意外だった。
(どんな目の覚めるような美人が出てくるかと思いきや)
どちらかと言えば可愛らしい容姿。
イギリスには悪いが、お世辞にも独占したくなるようなタイプではない。
「フランスだ。よろしくな」
そう言って手を差し出すと、おずおずと手を握り返してきた。
(ふうん……確かに今までにはなかったタイプのやつではあるな)
そう思った。
控えめな態度、落ち着いた物腰、丁寧な挨拶。
それのどれもが独特で、確かに興味深いやつではあった。
しかし、ひとつ気になったことといえば。
「なあ、日本人は人前では笑っちゃいけないのか?」
そう問いかけたくなるくらい、彼はにこりともしない。
いたって冷静な顔だ。
「いいえ、そんなこともありませんが、特に笑う必要もないので」
さっくり。
そんな音がしそうなほど、軽くあしらわれて少し傷ついている自分がいた。
(笑顔を見せる価値もないやつ、ってことか?)
こんな風に無下にされたことなど、外交の場では正直初めてだった。
「おいおい、少なくとも今日みたいな外交の場ではお世辞でも少しぐらいは笑顔を見せておくもんだぜ?」
傷ついた気持ちを隠しながらそう諭すと、日本は軽く驚いているようだった。
「そ、そういうものなんですか……?実は私、こういう場に慣れていないものですから」
その瞬間、さっきまでの氷の表情が少し崩れたのがわかった。
(もしかして、単に場慣れしていないだけか?)
そういえば、今思うと少々緊張した面持ちだったような気がしないでもない。
なんだ、ただ緊張していただけだったのか。
そう分かったとたん、俺の中で日本への好感度が急上昇した。
こいつとはじっくり付き合ってみたい。
きっと、今以上におもしろい面が見られるに違いない。
そう思ったから。
「くっ…くっく……いや、悪い。いや、お前おもしろいよ。どうだ?このフランスにお前の全てを預けてみないか?」
冗談めかしてそう言ってみた。
まあ、本気半分、どんな反応を返してくるかへの興味半分といったところだったが。
「それは……どういう意味ですか?」
冷静にそう返してくる日本。
(いいねぇ、口説き落としがいがありそうだよ)
「お前が欲しい、そう言えばいいのか?」
そう告げると、日本は一瞬目を見開いた。
さて、どんな反応をする?
「素敵なお申し出ですが、私はもう自分の足で立っておりますので、援助の必要はありませんよ」
にっこりと初めて笑顔を見せて。
さっくりと俺の申し出を蹴って、それでは、と別の場所に行ってしまった。
残された俺はというと。
「……くっ」
笑みが止まらなかった。
場慣れしていないといった日本から出てきたとは思えない見事な断りの言葉。
初めて見せてくれた笑顔。
流れる水のようによどみなく去っていく様。
そのどれもが興味深くて。
(気に入ったよ日本。本当に口説きがいがありそうだ)
俺はタバコに火をつけながら去っていく後姿をずっと見ていた。
後日――
「よう、イギリス!」
「げ、フランス!何しに来たてめー」
「おいおい、そんなけんか腰になるなよ。報告に来たってだけでさ」
「?報告?何だよ」
「俺も参戦しようかと思ってさ、日本の文明化に」
「!?はぁ!?なななんっ?」
「いやー、やっぱりばらばらだと思っても根っこの方は繋がってるもんだ。好みも似てくるもんだな」
「!!ま、まさか……」
「そーゆーこったから、ま、よろしく」
「ふ、ふざけんな!!!勝手に日本に近づくなってあれほど……」
「はぁーお前も青いねぇ……そんな口約束なんかでどうにかなると思ってたわけ?青いぜイギリス」
「てめぇ!!マジぶっ倒す!」
イギリスがかわいそうなのは、果てしなく仕様
2007/06/12 composed by Hal Harumiya
Lacrima/ばらばらだと思っても根っこの方は繋がってるもんだ(一番星への願いごと)
2007/06/12 composed by Hal Harumiya