君に伝わればいいのに

「日本さーん」

お邪魔しまーす、と少し高めの声音が家に響いた。
ああ、彼女に会うのは実は結構久しぶりですね、とふと思う。
いつでも来ていいですよと言ってあるのに、彼女は緩く横に首を振って苦笑いをする。

「そんなこと言うと、本当に毎日来ちゃいますから」

毎日来ちゃうと、帰るとき離れがたくなるからそれはできないと。
少しさびしそうな笑みを見せる。
その顔を見ると私は言葉を続けられなくなるから、ただ一言そうですか、とだけ告げた。

兄のように慕ってくれる彼女がとても愛おしくて愛おしくて。
ふわり、とその細い肩に腕をまわして抱きとめた。
そうすると、遠慮がちに着物の裾をきゅ、と握ってくる。
そんな何気ない仕草でさえ、可愛くてしょうがない。

家族愛かそれとも慕情か。
わからない。
けれど、この腕の中の小さな存在は。
無垢で優しい微笑みと絶対の信頼を私に送ってくれるこの人は。
私の大切な存在なのだとこれ以上ないほど強く確信する。
君の往く道の前にどうか幸せだけが降ればいいのにと願いながら。
私は彼女を柔く抱きしめるのだ。

とたとたと響く足音にはっと我にかえる。
ああ、もうすぐ彼女がここへ来る。
いつものように暖かい笑顔を見せて。

「日本さんっこんにちは!」
「こんにちは、寒かったでしょう?お茶を入れますからこちらへお入りなさいな」

ああ、この瞬間が本当に一番幸せだよと、君に伝わればいいのに。




日本が台湾さんだけ君呼びしていたら萌える てかみじかっ 雰囲気短文だ
2008/11/27 composed by Hal Harumiya