邪魔する輩は排除せよ!

これ以上好き勝手されてたまるか。


「日本」
呼びかけると日本は目を丸くしてこちらを見た。

「な、なんでしょう、スイスさん」
「?何を驚いているのだ?」
「いや、スイスさんのほうから声をかけてこられるなんて……と、すみません」

ああ、それで。

「我輩もたまには声ぐらいかける」

そう言うと、日本はそうなんですか?と首をひねりつつ納得したようだった。
そんなに我輩が他国に話しかけるのが珍しいか?
まあ、確かにあまり他国とは関わらない主義ではあるが。

「そんなことより日本。この間から相変わらず何も変わっていないな」

そう言うと、日本はかすかに肩を震わせた。
ふむ、自覚はあるということか。

「いつまでもアメリカやイギリスの言いなりではいかんだろう!自分の意見を持つべきである」

この間言ったことをまた繰り返した。

「いえ、分かってはいるんですが、お、お世話にもなりましたし、無下にはできないというか……」

イライラ。
なんなのだ、この日本のあいまいな態度は。

「それに我が国に武力がない以上アメリカさんに頼るしかないのです」

結局のところ、そこに行き着くわけか。
確かに今の日本の状況はそれしか道がないようであるな。

「だから、その態度がよくないのである。憲法などいくらでも改正できようが!」
「ええええ!?そ、そんな無茶な……」

お前がその気になれば、いくらでも欧米諸国に対抗する力を持てるのに。

「だから我輩が力を貸す、と言っているのである」
「ちょ、ちょっとスイスさ……」

「はい、ストーップ!!そこまでだよ、スイス」

後ろから間の抜けたような声がしたので振り返ると、アメリカとイギリスが正反対の表情をして立っていた。
イギリスは我輩に今にもつかみかからんばかりで、一方のアメリカはニコニコと不気味なくらい微笑んでいた。
噂をすればなんとやらとはこのことか。
日本からこのことわざを聞いた時は特に何も思わなかったが、今実感した。
本当に噂をすると寄ってくるものであるな。
そんな場にそぐわぬことを考えていると、イギリスが口を開いた。

「おいスイス!日本に変なこと吹き込んでんじゃねーよ!」
「変なこととは?我輩は日本にただ道を示しただけである。それはお前たちから見ての変なことであろう?」

日本には関係のないことである。
そう切り返すと、イギリスはぐっと言葉に詰まった。

「そーだね、それは確かに。だからこそ余計なこと言わないでほしいんだよね」

ニコニコと不気味なくらい微笑んでいるアメリカ。
ちらと日本に視線を投げると、オロオロと困った顔をして何か言いあぐねている。
全く、こんな時ですらも自分の意見を言うことができないのか。

「というわけで、日本はこれから俺たちと重要な会議だから、返してくれる?」

そう言うと、さあ日本行こうか、と日本を無理やり引っ張っていこうとする。

「ちょ、ちょっとアメリカさん!!痛いですって!」

その日本の言葉に、こちらを見た縋るような目に。
何かが切れた。

グイッ

「我輩の日本に近づくでない」
「ちょ、ちょっ…うわっスイスさ」

気がつくと、日本を引っ張ってアメリカたちに銃口を向けていた。

「おいおい、スイス……そんなものここでぶっ放したら危ねー…ってか、日本はお前のじゃねー!」
「そうだよスイス……いくら永世中立国でも丸腰を打ったらまずいだろ?」

口々にそうつぶやく2人。

「我輩は今日本と話をしていたのである。それを勝手に侵したのはお前たちだ。我輩は自分の領土を守る権利がある」
「りょ、領土って私はあなたの領土じゃありません……って、うわぁ!」

日本の文句を無視して我輩は出口へ向かった。

「日本、今からお前の根性を我輩が叩きなおしてやるのである」

日本を自立心のある一流の国家にしてやるのである。

「日本はそう簡単に染まらないと思うよ?」

すれ違いざまにアメリカがつぶやいたその言葉も無視した。

「じゃあスイス、お手並み拝見といこうか」

勝手に言っているがいい。
この軟弱男を蘇らせてみせる。
我輩はそう心に誓って、ホールを後にしたのである。


(そういえば、なんで我輩は日本のことでこんなにムキにならなければならないのだ?)
(まあ、いい。日本が我輩好みに変わるのが楽しみだ)




柚本さんとこの瑞日に触発されたせいで書いた瑞日 こっそり柚本さんに捧げちゃうよ
2007/05/13 composed by Hal Harumiya