eifersuchtiger Sie

「そうではない!そうではないのだ……」
そうつぶやいたきり黙りこくってしまったスイスさん。
頭を垂れ、眉をきつく寄せ、唇を強く噛んでいる。

そうではないと言うのなら、さっきの台詞はいったいなんだったのか。




事の発端は私たちの話の途中に出てきたアメリカさんとイギリスさんのことからだった。

「アメリカやイギリスは信用できん!お前も知っているであろう、あやつらが裏では相当非道な所業をしていることを」
「ええ、確かにそれは知ってはおりますが、私には今のところそんな態度は見せませんし……」
「それが甘いと言っておろうが!悪いことは言わぬ、それ以上親密にはなるな」
「!!……し、しかしお2人とも付き合ってみるとそこまで悪い人には見えな」

「日本まだ言うか!あやつらと付き合っていたのではお前の国はいつまで経っても平和にはならぬ。外交など無駄だ」

私のためを思って言ってくれていたのだろうが、最後の一言はどうしても我慢が出来なかった。
外交も平和共存も私がここ最近特に力を入れていたことだったから。

「……それでは、私がこうして貴方と話している時間もすべて無駄、ということですか」

無意識に声が低くなる。
それを聞いて彼はハッとしたようにこちらを見た。
言い過ぎたことを自覚したのだろうか。
しかし、それに気づいてももう遅い。
私はかなり怒っていた。

「ち、違う!そういうことを言ったのではない!わ、我輩はただ……」
「ただ?ただなんだと?私の同盟国を馬鹿にした挙句、外交など無駄だと言って。」

ああ。
「貴方にとってはこの時間も無駄だったようですね、お時間を取らせてしまって申し訳ありませんでした」

そうして、深々と頭を下げた。
我ながら意地の悪い言い方だと思ったが、口が止まってくれなかった。
スイスさんがそんなことを口にするなんて思わなかったからだ。
だから余計に。

そう告げると、スイスさんは下を向き、冒頭の台詞に戻る。


「私、スイスさんはそんな穿った見方をしない方だと思っていました」

口は悪い、性格もお世辞にもいいとは言えないこの方を好ましいと思っていたのは、相手をまっすぐに評価するところがすきだったからだ。
それなのに。
裏切られた気分だった。
いままで私が信じていたものを否定された気持ちになった。

「違う!!!我輩はそういう意味で言ったのではない!!」

ひときわ大きな声があたりに響く。
顔を上げ、眉根はまだきつく寄っていたが、彼の澄んだ瞳がまっすぐ私を捉えた。
では、さっきの言葉の意味は?

「それでは、貴方はどういう意味であんなことをおっしゃったのですか?」

どうしてあんな冷たいことを言ったの?
私にどうしてほしいの?

本当に貴方が求めていることは、何?

その重い口が、開いた。

「嫌なのである……あいつらと一緒にいるお前を見るのが」

小さくつぶやいたその顔は、朱。
つられて自分の顔が熱くなっていくのが分かった。
だって、スイスさんがそんなことを言うなんて思わなかったから。
なんと言葉を返したらよいか分からず、ただただ彼を見つめていると、彼はますます顔を染め上げて。

「もういいっ!!今のは聞かなかったことにしろ!こっちを見るな!」

そう叫んで、そっぽを向いてしまった。
そうして彼のあの発言が、彼に似合わずちょっとした独占欲から出たのだと気づいて。
思わず綻んでしまう口元を必死に隠した。

素直じゃない貴方には素直に気持ちを伝えてあげましょう。

「貴方とともにいる時間が一番幸せなんです」と。




何が一番書きたかったかってそれは、スイスってば焼きもちやさん☆ってこと
2007/05/23 composed by Hal Harumiya