いますぐ会いたい

ふとしたことがきっかけで。

例えば、部屋にある飲みかけのティーカップを見たとき。
(そういえば、初めてあいつが紅茶を飲んだ時すげー驚いてたな)

例えば、ふらっと出歩いた外で猫が足に擦り寄ってきたとき。
(あいつならフッと微笑んで抱きかかえるんだろうな)

例えば、あいつじゃなくて他の誰かに会ったとき。
(そういえば、最近顔を見てないな)

以前ならなんとも思わなかったのに。
気がつくとあいつのことばかり考えてる自分がいて。
必死に心の中で否定したけれど、そんなこと無意味で。

ただただあいつに、いますぐ会いたいと考えている自分がいた。


きっかけは些細なことで。

例えば、あの方が置いていかれた紅茶の缶が目にはいったとき。
(どうしたらあんなおいしいお茶が入れられるのでしょう?)

例えば、縁側に出て、もう青々としている桜の木を眺めたとき。
(桜を見てあんなに喜んでくれたのは意外でした)

例えば、他の方にあの方の様子をたまたまお聞きしたとき。
(ああ、そういえば最近お会いしていませんでしたね)

それに気がつくと、無性にお会いしたいと思っている自分がいて。
久しぶりに照れ笑いしているあの方にお会いして、一緒に笑いあえたらいいのにと思って。
居ても立ってもいられなくなって。
いますぐ会いたくて。
気がついたら、外に飛び出していました。


「うわっっ!!!」
「す、すみま……え?」
「ど、どうしたんだ日本!いきなり飛び出してきて。どこかに出かけるのか」
「…い、いえ……、イギリスさんこそ、こんなところでどうされたのです?」
「い、いやべ、別に……。たっ、たまたま仕事で日本にくる用事があって、それで」
「……わざわざ訪ねてくださったのですか?」
「かっ、勘違いするなよ!ついでだからな、仕事のついでだ。お前に会いに来たわけじゃないんだからな!」
「ふふっ、ついででも顔を見に来てくださってありがとうございます。もしよろしければお茶をお入れいたしますよ?」
「……邪魔させてもらおう」
「はい!どうぞ、中へお入り下さい」




あまあま英日を目指したつもり つもりだけ……
2007/05/29 composed by Hal Harumiya


Lacrima/いますぐ会いたい(一番星への願いごと)