ひとりきりになんかさせない

 那岐はいつもそう。
 口じゃいつも「面倒」とか、「なんで僕がそんなことやらなきゃならないんだ」とか「エネルギーの無駄」とか言って。 いつも、わたしを助けてくれたよね。
 中学に入ってから、この髪の色で少しいじめられてた時も、那岐はため息をひとつついて、

 「千尋は気にしすぎなんだよ。今時髪の色でいじめるなんてバカバカしくてつきあってらんないね」

 なんて、クラス全員のいるところであっさり言っちゃって。(自分だって影でいろいろ言われてたのに)
 それ以来髪の色とかでいじめられることはなくなったっけ。
 なんだかんだ言いつついつもそばにいてくれたし、わたしの悩みは面倒くさがりながら最後まで聞いてくれた。
 そうして、いつもひとこと言うんだよね、

 「千尋は真面目すぎ。もっと肩の力抜けば?」

 って。
 今思えば、本当にそうかもしれない。
 ほら、わたしって融通きかないから。
 一回これって思っちゃうと、それに固執しちゃうんだよね。

 だからさ。

 いくら那岐がわたしのこと突き放しても、わたしは無理なんだよ。
 那岐だけを犠牲にできるわけない。
 那岐を助けるって。 ひとりきりになんかさせないって。
 もう決めちゃったもの。
 那岐も知ってるでしょ?

 わたしがものすごく強情だって。

 だからね、那岐。
 わたしは、あなたを助けたいの。
 あなたと共に生きたいの。
 あなたが、わたしがどんなにつらい時でもそばにいてくれたように。
 わたしもあなたがつらい時は絶対離れないって。
 どんなに冷たくされても、離れないって、決めたから。

 待っててね、那岐。
 わたしはあなたに追いついてみせるよ。
 あなただけを犠牲になんて、絶対させない。




那岐はなんだかんだいって場の空気を支配するタイプ
2008/07/14 composed by Hal Harumiya


Lacrima / ひとりきりになんかさせない