べんのぞ

「だーかーらぁー、さっきから大丈夫だって言ってるじゃありませんか!」
「いーえ!あまり顔色がよくないようですよ?意地を張らずに素直に具合が悪いと言ったらどうですか?」

弁慶さんはそう言うと、わたしのおでこに手を当てた。
ひー!!!熱なんかなくても、熱が出てきちゃいそうだよー。

「おや…やっぱり熱があるみたいですね。顔がちょっと赤い。今日は邸で休んでいなさい」

優しい、でもきっぱりとした口調にわたしはぐっと言葉に詰まる。
確かに…ちょぉっとだるいかなぁーとは思っていたんだけど。
でも、私が休んでいたのでは怨霊を封印できない。それに、他の兵士の士気を下げることにもつながる。

( だから……悟られないようにしていたのに、弁慶さんめ…… )

わたしは心の中で悪態をつく。
他の人にはばれなかったのに、さすが薬師ともいうべきか。
それが顔に出ていたのか、弁慶さんはふうっと息を吐くと、

「後で僕の悪口ならいくらでも聞きますから、とりあえず今日は安静にしててくださいね」

と言った。
くー。心を見透かされてるのがますます癪に障る。なんなのよー。
普段はここまでムキになることはないのだが、やっぱり熱があったのだろう、無性に言い返してやりたい気分になった。
でも、そんなことには当然わたしは気づいてなくて。
怒りに任せて、かなり不機嫌になっていた。

「大体、ほかの人が気づかなかったのに、なんで弁慶さんは気づいたんですか」

暗に余計なことを、という意味を含ませる。
そんな時、彼の口から言われた言葉にわたしはまた言い返せなくなってしまった。
彼はにっこりと笑うと、耳元でこうささやいた。

「だって、他の誰よりもあなたのことを気にかけているから。当然でしょう?」

ああ、また熱があがっちゃうよ。




べんのぞすきです(いきなり)