ひののぞ

信じたりしないよ、あなたの言葉なんて。
誰にでもおんなじこと、言ってるんでしょ?
わたしは騙されないんだから。

信じてくれよ、オレの言葉を。
お前に、お前だけに囁いているこの言の葉を。
本気なんだ、お前だけに。


嘘。そうやっていろんな人に声かけてきたくせに。
お願いだからわたしの気持ちをかき乱さないで。
わたしはあなたなんか信じない。

嘘じゃない。どう言ったら分かってもらえるんだ。
お前だってオレのペースをかき乱して。
本気になんかなる予定じゃ、なかったのに。


それはどういう意味?
恋なんて戯れだって、言っていたのはあなた。
なのに、なんでそんなに切ない顔をするの?
わたしには、あなたの気持ちが分からない。

さっきから言ってるだろ?お前がすきなんだ、大事なんだ、一緒にいたいんだ!
……恋なんか一生できないと思ってた。誰もすきになんかなれないと。
じゃあ、この気持ちはなんなんだ?お前のことを考えるたび切なくて泣きそうになる。
でも、愛しくてしょうがない。この気持ちは……恋じゃないのか?


あなたも同じ気持ちなの?
胸が苦しくて泣きそうになって、でも愛しくてしょうがないこの気持ち。
わたし、あなたのことを信じてもいいの?

お前も持っているならオレは安心してこの気持ちを恋だと言うことが出来るね。
簡単には消えないこの気持ち。
オレのこと、信じてくれ。


それでも、もし言葉が信じられないなら、何度でもお前を抱きしめよう。
きつくきつく、オレのありったけの気持ちを込めて。




段落ごとに対応した形にしてみたかった 試し小噺



百人一首で100のお題 072 信じたりしないよ。君の言葉なんて。/音に聞く たかしの浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ