簡単に言えない

幼い頃からあなたを見てきました。
楽しそうに笑う姿や悔しそうに涙を流す姿。
なんにでも一生懸命なところや、ちょっとした怠けぐせも。
あなたのほとんどを知っていると言っていい。
そう思っていました。
あなたの近くにいることが当たり前で。
だから一緒にこの世界に飛ばされたと知ったときには、不安よりも安堵の方が大きかった。

( あなたを一人にしなくてよかった )

本当にそう思った。

もういつからでしょうね?あなたが俺にとってただの幼なじみではなくなったのは。
もう覚えていないくらい昔のことで、ごくごく自然にあなたは俺の特別だった。
そしてあなたにとっても俺は特別な存在であると、うぬぼれではなく思っています。
誰よりも近くにいるこの関係が心地よくて、ずっとこのままでいたいと思ったことすら一度や二度じゃない。
でも同時に。
無性にこの状態を壊したいと願ってしまう自分もいて。

俺だけを見てほしい。
俺だけを頼ってほしい。
本当にただ俺だけがあなたの隣に立つことを許された人間になりたい。
そうなりたいと。
それを願ってしまうほど俺はあなたという存在に焦がれて。
あなたを手に入れたいと、この腕に抱きたいと。
そう思ってしまうくらいあなたを欲しているのに。

ただの一言が、言えない。
ただ一言、「好きです」と。
「あなたのことがずっと好きだったんです」と。
言えたらどんなに楽なことだろう。

先輩。
あなたは誰よりも近くて、そして遠い。




譲を書くとせつなくなる……