嫉妬

あなたが誰かに微笑むたびに、自分を浅ましいと感じてしまう。
決して自分ひとりのものには出来ない光、それがあなた。
神から愛された存在――尊く、清い存在（ひと）。
あなたにこのような感情を抱くなど、許されるはずがないのに。
それでも、あなたの涙を、笑顔を、あなた自身を、欲してしまう私は。

（　なんと愚かなのだろう　）




近すぎる。
最近よく考えていることだ。
私は最近普通の人に近づきすぎた。
八葉なのだから多少は仕方ないとも思っていた。
どう行動したとしても、八葉である以上他の八葉や神子と接触することは避けられないことだから。
しかし、このところ――――

（　周りと馴染みすぎた　）

皆と過ごす日々が嫌いな訳ではない。
むしろ居心地がよすぎるくらいだ。
誰もが私を仲間として八葉として欲してくれている。
それを感じることが出来るから。
存在する意味を感じさせてくれるから。
しかし。

（　私は、皆とは違う存在なのだ　）

近づけば近づくほど思い知らされる自分との違い。
人と怨霊との境界。
生けるものと死しているもの。
皆と近すぎて、私は勘違いをしそうになる。
自分が人であるような錯覚を覚えてしまう。
皆と同じような生をこれから歩んでいけそうなそんな錯覚を。

「……神子……」

口から知らずその名が漏れた。
いつからこんなにあなたを想うようになったのだろう。
あなたと出会い、ともに戦い、あなたを守り、そして、あなたを慕うようになった。
ごくごく当然の流れのようにあなたを想うようになった。
自分の手であなたを守りたいと思うようになった。

（　そう、近づきすぎた　）

自嘲気味に口元が歪む。
そんな考えを持つこと自体が誤りなのに。
私と神子は相容れない存在だ。
それなのに。

「どうして……私は、」

他の者を羨ましいと思ってしまうのだろう。
彼女と共に生きる可能性を望んでしまうのだろう。
あなたともっと早くに出会っていたかった。