そしてわたしは捕まった。

 「おー団子、おー団子♪」

 屯所の縁側に座り、わたしは浮かれていた。
 隣にはさっき買ってきたばかりの包み。 もちろんさっきから言っているとおり、中身はお団子である。

 「あ、お茶入れないと」

 そうつぶやく声も少し高いことが自分でもわかる。
 だって、うれしいんだもん。
 だいすきなお団子を前に喜ばないことがどうして出来ようか?
 そりゃ、声も弾むというものである。

 「何がそんなに嬉しいんですか?桜庭さん」
 「わっ!!…っと、沖田さんっ!……っつう!!」

 台所でお茶を入れているところに突然声をかけられて、思わず急須を傾けてしまったわたしは熱いお茶を手にかけてしまった。
 手に鋭い痛みが走る。

 「桜庭さんっ!!!」

 え?とわたしが沖田さんを見る前にわたしの手は沖田さんに引っ張られて水の中にいた。

 「お、沖田さん…?」

 何が起きたのか頭が付いていかない。

 「何やってるんですか!!!早く冷やさないと!」

 沖田さんの顔は真剣でこんな時なのにもかかわらずわたしは見惚れてしまった。

 「…桜庭さん…?」
 「…っす、すみませんわたし…」

 訝しげな沖田さんの顔に私はハッと正気に戻る。

 ( 何考えてんのわたしってば…迷惑かけてるのに )

 気づけばまだ沖田さんに腕をつかまれたままだ。 わたしは急に恥ずかしくなって手を引こうとした。
 でも。

 「ダメです。火傷してるんですからしっかり冷やさないと」

 と言って、沖田さんは離してくれなかった。

 「で、でも…、沖田さんまで冷えてしまいます」

 手を離してほしくてそう呟く。
 冷たい水の中にあるはずなのに、沖田さんにつかまれているところだけおかしいくらいに熱かった。
 そして、沖田さんは言う。

「いいんですよ、あなたの手を離したくないんです」

その一言をわたしは一生忘れられない。

 だってわたしは。
 その一言であなたに捕まってしまったのだから。




純粋な男の子はかわいい
2005/02/25 composed by Hal Harumiya