Love You Only1

「やあ、イギリス!元気だったかい?」

お願いアメリカさん、あの人にだけは声をかけないで。
あの人には、会いたくない。
そう祈っても神は無情だ。

「ようアメリ……」

ああ、その反応が予想できていたから貴方とお会いするのは嫌だったのです。
あの人は私を見るなり全ての動きが止まってしまいました。
握手をしようと差し出した手もそのままに。
彼は私だけを見つめたまま。
いたたまれなくてどうしようもなくて、私は静かに視線を逸らしました。
あの人の眼差しは口とは裏腹に雄弁だから。
何が言いたいかもわかってしまいました。
なんでここにいるんだ、と。
あの人は言っているようでした。

「どうだいイギリス!!日本はすっかり元気になっただろう?」

この時ばかりは天真爛漫なアメリカさんに感謝せざるをえませんでした。
でなければ私はこの場からきっと逃げ出していたでしょうから。
そのアメリカさんの声にイギリスさんははっとしたようでした。

「あ、ああ……そうだな。日本……久しぶりだな」

懐かしい声音でした。
まるであの頃に戻ったような気持ちになりました。

「はい、お久しぶりですイギリスさん」

さっきまで怖くて見れなかった彼の顔を盗み見ると、ぎこちなく微笑んで下さっていました。

それではっきりと自覚しました。
もう全ては終わったことなのだと。
先の大戦中負った怪我も負わせた傷も全て癒えて。
彼は勝ち、私は負け、そして世界が変わった。
前のような関係に戻ることはもうないのだろうと。

そう、前のようには決して。

「聞いてくれよイギリス!日本はすごいんだ!あっという間に色んなことを吸収してさ!」
やめて、その先を言わないで。

「アメリカさ」

「さすが俺の恋人だと思わないかい?イギリス」

ああ、本当に。
貴方だけには知られたくなかった。


(それでもまだ貴方を想っているといったなら貴方は私を軽蔑するでしょうか)




……これで英←日→米と言い張ってみる
2007/05/24 composed by Hal Harumiya