Love You Only2

「さすが俺の恋人だと思わないかい?イギリス」

そう聞いた瞬間、周りの音が何にも聞こえなくった。息を吸うのさえ忘れた。
その言葉の意味を考えることが出来なかった。
恋人。
確かにアメリカはそう言った。 いつものような無邪気な笑みを俺に返しながら。
何を考えているかわからない笑み。
無意識に視線が日本に向かったが、日本はひたすら下を向いて黙りこくっていた。

冗談なんかじゃ、ないってことか。

思ったよりもショックを受けていることがショックだった。
こんなことになっているのでは、とうすうすは気付いていた。
日本は先の大戦の後傷を癒すのに精一杯なようだったから。
そんなとき真っ先に手を差し延べてくれたアメリカに頼ってしまったのだろう。
俺だって助けたかったが、自国のことでいっぱいで。
まして日本にはマレーで敗れたから、民は彼を救うのにいい顔をしなかった。

(やっぱりすぐに助けてくれるやつの方がいいだろうな)

そう考えて納得してしまう自分を自嘲気味に笑った。
そうなってしまった以上自分にはどうすることも出来ない。
いくら俺があいつのことを想っていても。
まだすきだと言って日本を苦しめるのは嫌だ。
それならば自分が出来るのは、紳士らしく黙って身を引くことだけだ。
幸い俺の知らないやつじゃない。
アメリカはわがままだけどいいやつだ。
自己中だが力がある。
あいつになら日本を任せても、いい。

(はっ。何を偉そうに……)

そんな権利なんてないのに。
あの時、袂を別けた時、そんな権利は無くなったのだ。
あいつの柔らかな微笑みも、穏やかな話し方も、落ち着いた雰囲気もなにもかも。
忘れなければならない。

そう思うのに。
果てしなく難しいことのように思えた。

お前の隣にいるのがどうして俺じゃないんだろう、なんて考えてしまうなんて。




アメリカはいいやつだ、と言い聞かせることで日本を大切にしようとがんばってる感じ
2007/05/25 composed by Hal Harumiya