「敦盛さ〜ん」
また来た。
はぁ、と口から己の知らぬ間にため息が漏れる。
彼女と出会って一ヶ月。
あの雨の渡り廊下で彼女と出会ってからというもの、自分の高校生活は180度変わってしまった。
あの日。
あの雨の渡り廊下。
「触らないでっ!」と響いた声。
パンッと振り払われた手。
じん、と残った痛み。
目を見開いて、溢れる憤りに震えていた彼女。
次の瞬間、顔に後悔とも取れる朱が走った。
しかし、感情を押し殺したような声で、
「……失礼っ…します…」
とだけ言い、私の横をすり抜けていった。
その一連の動作をただ呆然と見ていた私は、その直後初めて彼女を傷つけたことに気づいた。
「……っ…」
だが、慌てて振り返っても遅く、すでに彼女はあの場から走り去ってしまっていた。
私はしとしとと降る雨の中で、一歩も動けずにいた。
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
彼女の知り合いに間違えられたのは別にいい。
問題はそこじゃない。
何故あそこまで怒りのこもった目を向けられなければならないのか。 ただ私は彼女のことなど知らないと、言っただけだというのに。
あの目。
誰だ、と聞いたときに見開かれたあの目。
その瞳によぎったのは……絶望。
その前に私に飛びついてきたときとは比べられない闇がそこにはあった。
あんなにきらきらと輝いていた笑顔が一瞬にして絶望と怒りへ変わり、全身で私を拒絶した。
なぜあんな目を向けられなければならない?
なぜ初対面の女性にあんなに拒絶されなければならない?
なぜ彼女のことでこんなに悩まなければならない?
考えても答えは出ない。
謎は深まるばかりだ。
「……っ」
気になってしょうがなくて、私は彼女を追いかけた。
どっちにいけばいいか見当もつかなかったけれど、とりあえず彼女を探さなければ、と思った。
あちこち探して、やっと昇降口に彼女の姿を見つけた。
しかし、彼女は一人ではなく、男と一緒に外に出て行くところだった。
そこまで見てから、私は考えるのをやめた。
もうどうせ会うこともないだろう。
私は3年生だし、同じ階で彼女を見かけたことはないからきっと下級生なのだろう。
それならば放課後以外にばったり会うということもない。
あってもあの調子じゃ話しかけてくることもないだろうし、こちらも話すことはない。
ならば考えるだけ無駄というものだ。
そう考えて私はそれっきり彼女のことを考えるのをやめたし、名前さえ知らない彼女のことを思い出すこともなかった。
また来た。
はぁ、と口から己の知らぬ間にため息が漏れる。
彼女と出会って一ヶ月。
あの雨の渡り廊下で彼女と出会ってからというもの、自分の高校生活は180度変わってしまった。
あの日。
あの雨の渡り廊下。
「触らないでっ!」と響いた声。
パンッと振り払われた手。
じん、と残った痛み。
目を見開いて、溢れる憤りに震えていた彼女。
次の瞬間、顔に後悔とも取れる朱が走った。
しかし、感情を押し殺したような声で、
「……失礼っ…します…」
とだけ言い、私の横をすり抜けていった。
その一連の動作をただ呆然と見ていた私は、その直後初めて彼女を傷つけたことに気づいた。
「……っ…」
だが、慌てて振り返っても遅く、すでに彼女はあの場から走り去ってしまっていた。
私はしとしとと降る雨の中で、一歩も動けずにいた。
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
彼女の知り合いに間違えられたのは別にいい。
問題はそこじゃない。
何故あそこまで怒りのこもった目を向けられなければならないのか。 ただ私は彼女のことなど知らないと、言っただけだというのに。
あの目。
誰だ、と聞いたときに見開かれたあの目。
その瞳によぎったのは……絶望。
その前に私に飛びついてきたときとは比べられない闇がそこにはあった。
あんなにきらきらと輝いていた笑顔が一瞬にして絶望と怒りへ変わり、全身で私を拒絶した。
なぜあんな目を向けられなければならない?
なぜ初対面の女性にあんなに拒絶されなければならない?
なぜ彼女のことでこんなに悩まなければならない?
考えても答えは出ない。
謎は深まるばかりだ。
「……っ」
気になってしょうがなくて、私は彼女を追いかけた。
どっちにいけばいいか見当もつかなかったけれど、とりあえず彼女を探さなければ、と思った。
あちこち探して、やっと昇降口に彼女の姿を見つけた。
しかし、彼女は一人ではなく、男と一緒に外に出て行くところだった。
そこまで見てから、私は考えるのをやめた。
もうどうせ会うこともないだろう。
私は3年生だし、同じ階で彼女を見かけたことはないからきっと下級生なのだろう。
それならば放課後以外にばったり会うということもない。
あってもあの調子じゃ話しかけてくることもないだろうし、こちらも話すことはない。
ならば考えるだけ無駄というものだ。
そう考えて私はそれっきり彼女のことを考えるのをやめたし、名前さえ知らない彼女のことを思い出すこともなかった。
あっつんがどんどん冷たい人になっていってます
2007/04/05 composed by Hal Harumiya
2007/04/05 composed by Hal Harumiya